カスピ海の夏の海カスピ海へ突き出でし半島の首都バクーは夏盛りにして暑きことこの上なし。 風の街と呼ばれしバクーも、たのみの風を失わば、 にじみでる汗しとどにして、耐えがたきもせんかたなし。 夾竹桃の赤い花咲き乱れ、ミモザの紫の花は 白い穂を結びて美しき綿毛を風に飛び放つ。 緑濃き木陰の路あまたある麗しき夏、 週末は、カスピ海の水遊びが慣わしとなりけり。 一宿一飯のわが宿には、各階に寝ずの番をしたる用心棒あまた。 おおくはアゼルの武道競技で優勝せし、眉秀でたる若者どちなり。 その用心棒の某、野郎ばかりではせんかたなしと、 見目秀でたる乙女を伴いて水浴びする算段をして誘いけり。 楽しみにしておりしに、約束の昼の刻に乙女現れず。 用心棒氏、電話すれば、かの乙女の母君出でて、 「わが娘はいまだ寝ておりし」とつれなき言の葉、 「あれほど約束せしに。」とアゼルの女心の不可思議さを嘆く。 女心はいずこも同じ、秋の空。うたかたの雲のごとく行方ままならず。 さてクーラーを効かせたまま、裸で寝ておりしに夏風邪を引きけり。 夏風邪や海辺の幸の遠のけり ロシア語の麗しき師匠と浜辺の寺子屋ならぬ、海辺にて一日、 甲羅干しする約束もかなわず、宿にて静養する憂き目とあいなりけり。 連日、宴会続きて、体内を酒精消毒したゆえや、ようやくに体調復帰したり。 カスピ海は、沖には石油を掘削する石油基地が浮かぶが特徴。 カスピ海のこの国は、貧しきながら、心も肢体も豊かに 夏の日をむさぼっていた。 眼つむれば頬に夏日の熱さ知る 無頼なる故充足の刻 欲しいまま無為にゆだねる光陰を なほ研磨する夏の陽光 ジャンル別一覧
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